異業種から新規参入に美容フェイスマスク(シートマスク)を検討する企業が増えている。その市場が持つ将来性、可能性にくわえ市場規模もかなりの成長を遂げている。これからもさらに加速していくのではないか。これまでの先行事例を踏まえ実例紹介とコンセプト分析をすることで新規参入を検討する企業の参考となるようまとめてみました。
◆地域特産の日本酒・酒粕を活用したフェイスマスク製品の事例
1. 新潟県:地酒フェイスマスク(逢楽)
- 製品名:新潟地酒フェイスマスクシリーズ
- 開発企業:株式会社つつわび(ブランド名:逢楽)
- 特徴:
- 新潟県内11の酒蔵(例:君の井、〆張鶴、麒麟山、今代司など)の日本酒と酒粕を使用
- 酒粕は独自製法で加工し、そのまま配合
- 香料・着色料不使用のシンプル処方
- 販売時期:2023年9月よりAmazonで取り扱い開始
- 実績:Amazonビューティーカテゴリで1,160位(フェイスマスク部門)
2. 兵庫県:菊正宗 日本酒のフェイスマスク
- 製品名:菊正宗 日本酒のフェイスマスク
- 開発企業:菊正宗酒造株式会社
- 特徴:
- 純米吟醸酒を配合
- コメ発酵液による保湿効果
- 肌触りの良いシートを使用
- 販売時期:詳細な販売開始時期は不明
- 実績:アットコスメなどで高評価を獲得
3. 山口県:獺祭フェイシャルマスク
- 製品名:獺祭フェイシャルマスク
- 開発企業:旭酒造株式会社(獺祭)
- 監修:美容家・山本未奈子氏
- 特徴:
- 純米大吟醸「磨き二割三分」とその酒粕エキスを配合
- 16種類の天然アミノ酸、ナノコラーゲン、ビタミンC誘導体を含有
- 厚めのシートで高保湿、無香料
- 販売時期:2021年7月頃より販売開始
- 実績:高級感あるパッケージと使用感で好評
◆異業種が拡大する市場に参入するときの開発傾向と参考ポイント
1. 地域資源の活用とストーリーテリング
地域の特産品である日本酒や酒粕を活用し、地元の酒蔵とのコラボレーションによって製品の独自性を高めています。製品パッケージやマーケティングにおいて、酒蔵の歴史や特徴を伝えることで、消費者の共感を得ています。
2. シンプル処方と自然派志向
香料や着色料を使用せず、酒粕や日本酒の自然な香りや成分を活かすシンプルな処方が好まれています。特に敏感肌や自然派志向の消費者に支持されています。
3. 高保湿・高機能性の追求
酒粕や日本酒に含まれるアミノ酸や発酵成分による高い保湿効果が注目されています。さらに、ナノコラーゲンやビタミンC誘導体などの美容成分を追加することで、製品の機能性を高めています。
美容、コスメに進出する日本酒業界は日本の伝統産業が異業種に新規参入していくベンチマークと見ても良いのではないか
◆地域特産品を活用したフェイスマスク・スキンケア製品の開発事例
地域 | 成分・素材 | 製品名・ブランド | 開発企業・団体 | 販売時期・実績等 |
---|---|---|---|---|
北海道 | アスパラガスエキス | アスパムーン モイスチャーゲル | 株式会社ランジョイ | 十勝産アスパラガスから抽出したエキスを配合。抗酸化作用があり、無添加化粧品として展開。 |
宮城県 | 白いちごエキス | WHITEICHIGO オーガニック スリーピングマスク | 株式会社ICHIGO | 白いちごのビタミンCとポリフェノールを活用し、美白効果を訴求。 |
長野県 | どくだみエキス | ETHICO どくだみシリーズ | 株式会社EECO | 無農薬で育てたどくだみを主原料とし、肌荒れや敏感肌に対応した乳液タイプのオールインワン製品。 |
岐阜県 | メナモミ(薬草) | メナモミ微粉末 | 蕪水亭 | 飛騨市で育てた無農薬のメナモミを使用し、動脈硬化や脳梗塞の予防にも効果があるとされる。 |
三重県 | アコヤ真珠エキス | ミキモト コスメティックス エッセンスマスクLX | ミキモト コスメティックス | 真珠養殖の歴史を活かし、パールコラーゲンとLPポリマーを配合した高級フェイスマスク。 |
京都府 | 宇治抹茶エキス | 抹茶フェイスマスク(商品名不明) | 株式会社アゼス | 抗酸化作用や肌の老化予防、整肌、くすみ対策に効果があるとされる宇治抹茶エキスを配合。 |
奈良県 | 柿の葉エキス | やまとcosmetic 米発酵液配合美容マスク | 株式会社マックス、近畿大学 | 奈良県産の柿の葉や日本酒を美容成分として配合し、産学連携で開発。2019年2月発売。 |
和歌山県 | みかん皮エキス | みかん肌まろ 化粧水 | 早和果樹園、龍谷大学 | みかんの皮に含まれる陳皮エキスが血行促進や肌の潤いを守る効果があるとされ、産学連携で開発。 |
滋賀県 | 紫草の根エキス | MURASAKIno ORGANIC | 株式会社みんなの奥永源寺 | 絶滅が危惧されている紫草の根を主原料にしたオーガニックコスメ。地域活性化をテーマに開発。 |
沖縄県 | オキナワモズク(フコイダン) | 海藻と花と果実の美容液マスク with 琉球美肌 | 株式会社アイスタイル(@cosme) | オキナワモズクから抽出される保湿成分フコイダンを配合し、沖縄の天然成分を活用したフェイスマスク。2017年3月発売。 |
石川県 | 金箔 | 金華24Kゴールドマスク | 株式会社箔一 | 金沢の金箔を使用したフェイスマスク。金が持つ微弱電流が血行を促進し、肌のターンオーバーを正常化に導く効果が期待される。 |
宮崎県 | 温泉水(南郷温泉) | どんタロ 保湿ジェル | 株式会社南郷温泉 | 南郷温泉のミネラル豊富な湯を使用した保湿ジェル。肌への優しさと保湿効果に着目して開発。 |
◆ 開発の具体的手法【市場分析から見える自然及び自然的であるこだわり】
1. 地域資源の活用とストーリーテリング
地域の特産品や伝統素材を活用し、地元の農家や生産者、大学、企業との連携によって製品の独自性を高めています。製品パッケージやマーケティングにおいて、素材の背景や生産者の想いを伝えることで、消費者の共感を得ています。
2. 自然派志向と高機能性の追求【消費者ニーズの動向】
無添加やオーガニック、ビーガン対応など、自然派志向の消費者に向けた製品開発が進んでいます。また、地域素材の機能性(抗酸化作用、美白効果、保湿効果など)を科学的に分析し、高機能な製品として訴求しています。
3. 産学官連携による開発【信頼性を担保する】
大学や研究機関との共同研究により、地域素材の美容効果を科学的に検証し、エビデンスに基づいた製品開発が行われています。これにより、製品の信頼性や付加価値が向上しています。
◆地域特産品を活用したフェイスマスクの成功事例
1. 三朝温泉コスメ(鳥取県)
- 製品名:三朝みすと、三朝温泉フェイスマスク
- 開発企業:三朝温泉観光協会/三朝温泉旅館協同組合
- 特徴:
- 世界屈指の放射能泉である三朝温泉の源泉を70%使用。
- 保湿力の高いヒアルロン酸などを配合し、肌にたっぷりと水分補給。
- 無添加・無香料・無着色で敏感肌にも対応。
- 実績:
- 「三朝みすと」は累計50万本の大ヒットを記録。
- フェイスマスクやジェルなど、スキンケアシリーズとして展開。
- 多くのリピーターに支持され、地域の観光資源としても注目を集めている。
2. 玉造温泉コスメ(島根県)
- 製品名:姫ラボフェイスパック、玉造キラキラミスト
- 開発企業:島根県内の企業(詳細不明)
- 特徴:
- 美肌の湯として名高い玉造温泉の源泉を74%使用。
- 肌の水分量をアップし、きめ細かなもっちりとした肌に整える。
- 無香料で家事の途中でも気にならずに使用可能。
- 実績:
- 観光客のお土産やギフトとして人気を博している。
- 地域の特産品として、地元経済の活性化にも寄与。
◆成功要因と開発の傾向【見えてくる方向性】
- 地域資源の活用とストーリーテリング:地域の特産品や伝統素材を活用し、地元の歴史や文化を伝えることで、製品の独自性とブランド価値を高めています。
- 自然派志向と高機能性の追求:無添加やオーガニック、ビーガン対応など、自然派志向の消費者に向けた製品開発が進んでいます。また、地域素材の機能性(抗酸化作用、美白効果、保湿効果など)を科学的に分析し、高機能な製品として訴求しています。
- 産学官連携による開発:大学や研究機関との共同研究により、地域素材の美容効果を科学的に検証し、エビデンスに基づいた製品開発が行われています。これにより、製品の信頼性や付加価値が向上しています。
地域特産品(観光物産など)に美容コスメ関連が選ばれることは決して珍しいことではなくなっている。品ぞろえの一環となりつつある。
◆野菜・果物を活用したオーガニックコスメの成功事例
. フルーツルーツ(fruits roots)
- 概要:日本国内で無農薬栽培されたフルーツやハーブを原料とし、全て天然成分のみで化粧品を製造することを目指すオーガニックコスメブランドです。
- 特徴:
- 無農薬の国産フルーツやハーブを使用。
- 天然成分100%の製品開発。
- エシカル消費やSDGsへの取り組みを重視。
- 実績:自然派志向の消費者から高い支持を得ており、オーガニックコスメ市場での認知度が向上しています。
2. 京野菜うるおうスキンケア(株式会社ロジック)
- 概要:京都産の伝統野菜である賀茂なす、賀茂とまと、伏見甘長から抽出したエキスを配合したスキンケアシリーズです。
- 特徴:
- 賀茂なすのナスニン(アントシアニン)による抗酸化作用。
- 賀茂とまとのリコピンやカロテンによる美肌効果。
- 伏見甘長のビタミンCやルテオリンによる潤い効果。
- 実績:地域資源を活用した製品として注目され、地元の観光土産やギフト需要にも対応しています。
3. Be(ビィー)スキンケアシリーズ
- 概要:静岡県の自社ハーブ園で育てた有機カミツレ(カモミール)を使用した乳酸桿菌発酵エキスを配合したスキンケア製品です。
- 特徴:
- 有機カミツレの整肌効果。
- 乳酸桿菌発酵エキスによる肌のバリア機能強化。
- 「潤う」から「整う」への機能強化を実現。
- 実績:リニューアルにより機能性を向上させ、オーガニック志向の消費者からの支持を拡大しています。
◆成功要因と市場動向【将来性と拡大する市場規模】
- 自然派志向の高まり:消費者の間で、化学物質を避け、自然由来の成分を求める傾向が強まっています。
- エシカル消費とSDGsへの関心:製品の背景や生産者への配慮、環境への影響を考慮した消費行動が広がっています。
- 地域資源の活用:地元の特産品や伝統素材を活用することで、製品の独自性とブランド価値を高めています。
- 産学官連携の推進:大学や研究機関との共同研究により、地域素材の美容効果を科学的に検証し、製品の信頼性を向上させています。
◆オーガニックフェイスマスクの販売価格帯(日本国内)
製品名 | 内容量 | 販売価格(税込) | 1枚あたり価格 | 特徴 |
---|---|---|---|---|
ALLNA ORGANIC フェイスマスク | 30枚入 | 2,000円 | 約66.7円 | オーガニックコットン100%使用、10種の無添加処方。夜用タイプも展開。 |
プレフェリート フェイスマスク | 30枚入 | 1,000円 | 約33.3円 | 日本製オーガニックコットン使用。訳あり品として特価販売。 |
F ORGANICS ディープモイスチャーシートマスク | 4枚入 | 3,300円 | 約825円 | 高保湿・エイジングケア向け。天然成分配合。 |
ORGAID エッセンスリフトマスク | 1枚入 | 1,045円 | 1,045円 | 無添加・植物由来成分使用。エイジングケアに特化。 |
このように、オーガニックフェイスマスクの価格帯は、1枚あたり約33円から1,045円と幅広く、ターゲット層や製品の特徴によって価格設定が異なります。
◆ビジネスとしての収益性と成功要因【市場は拡大している】
オーガニックフェイスマスク市場で成功している事例には、以下のような共通点が見られます。
1. 明確なターゲット設定と価格戦略
- ALLNA ORGANIC:30枚入りで2,000円という手頃な価格設定により、毎日使いたい層をターゲットにしています。
- F ORGANICS:高価格帯でありながら、エイジングケアや高保湿を求める層に向けた高機能製品を提供しています。
2. 販路の多様化
- ALLNA ORGANIC:公式オンラインショップやAmazonなどのECサイトで販売し、幅広い顧客層にアプローチしています。
- プレフェリート:Yahoo!ショッピングでの特価販売により、価格重視の顧客層を獲得しています。
3. 製品の差別化【自然、天然、オーガニック、高保湿】
- F ORGANICS:天然成分を使用し、高保湿・エイジングケアに特化した製品で差別化を図っています。
- ORGAID:無添加・植物由来成分を使用し、エイジングケアに特化した製品で高価格帯市場に参入しています。
◆美容フェイスマスクが新規参入しやすい理由
1. 開発コストが比較的低い
- 乳液やクリームに比べて処方がシンプルで、OEM製造の整備も進んでいます。
- 初期ロットも比較的小さく設定できる工場が多く、試験的販売が可能。
2. 既存ブランド力の応用が効く
- 飲食、アパレル、観光業など他業種でも、既存の地域資源や世界観を活かして参入可能。
- 例:旅館や温泉地 → 地元の湯や農作物を活かした美容マスク。
3. 販路開拓の選択肢が多い
- 通販・POP UP・お土産・ふるさと納税・海外向け越境ECなど多様なルートで売れる。
- 特に「地域×美容×自然派」は海外市場でも注目されやすい。
◆【実際の異業種参入例】
業種 | 参入ブランド | 内容 |
---|---|---|
観光業 | 姫ラボ(島根) | 温泉地の旅館組合が源泉を活用したコスメを開発。 |
農業法人 | 笑顔畑の山ちゃん(愛媛) | みかん農家が果皮エキスでフェイスマスク商品化。 |
飲料メーカー | サントリー(プロトタイプ段階) | 抹茶やウーロン茶成分を活用したスキンケア研究を進行。 |
◆成功のための参入条件
- 素材の独自性:特産物、温泉水、農産物など“語れる原料”があること。
- OEMパートナーの活用:信頼できる処方提案と柔軟なロット対応が重要。
- 世界観とストーリー構築:商品自体だけでなく「誰が」「なぜ」作ったかが響く時代。
- 販促力の確保:SNS、地域連携、ふるさと納税、クラファンなど活用できるリソース。
◆まとめ【多くの異業種が可能性を持つジャンル】
フェイスマスクは「物語×感性×低リスク試作」が可能な商品群であり、異業種参入には非常に適しているジャンルです。
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